ひとさじの砂糖とうたかたの日々の泡

一匙の砂糖に似たささやかな幸せや、 取るに足らない日々の泡の記録。

元・眼科スタッフによる“まめちしき” 《眼鏡/コンタクトレンズ編》

いつもいつも自己満足記事ばかり書いている私ですが、折角ブログとして書いている以上、少しくらいは人様の役に立つ記事を!と殊勝にも思い立ったり致しまして。

ついこの間まで勤務していた眼科にて培った知識を僅かなりとも書いておきたいと思います。
書いておかないと忘れていくし。

というのも、友人夫妻が経営しているバールによくお邪魔するのですが、そこで知り合ったお客さんに「眼科で働いてるんです」って言うと結構質問責めに遭ったりしたんですよね。
やっぱり皆『受診するほどじゃないけど気になる事』みたいなのがあるんだろうなぁと思ったりもしまして。
私も他の科に対してそうだけど。

因みに私は緑内障専門医の眼科でシュライバーという診療助手をしていました。
診察している医師の横でPC操作したりカルテ入力したりしている、あれです。
緑内障専門、といっても病院ではなくて開業医なので、
「最近眼が疲れる」
「何となく見えにくい」
「眼がかゆい」
みたいなごくごく一般的な症状で来られる方も沢山いらっしゃいました。
その辺の患者さんからよく質問を受けた事を思い出しつつ、書いていこうと思います。

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眼鏡を掛けると余計に眼が悪くなる?

小学校の視力検診で引っかかった子供ちゃんの親御さんから訊かれる事No.1。
実際、私が子供の頃もよくこれ噂的な感じで耳にしました。

結論から言うと、現在はこのように考えられていません。

今まで眼鏡を装用していなかった人が眼鏡を装用すると、
脳が“とても良く見える状態”を知ってしまう為、
眼鏡を外した時に比較で“見えなくなった”様に感じる所為だと思います。

また「眼鏡を装用していると眼が怠けて、ピント調節の筋肉が衰える」なんて話も聞きますが、これは医学的に根拠のない大いなる勘違いです。
一度正常に発達した視力というものは、眼鏡の装用有無で良くなったり悪くなったりするものではないので、その辺りのことは安心されて良いと思います。

視力の発達というものは生まれてから6歳くらいまでの間に終わるものなので、逆に言うとこの期間は、
・きっちりと“見える”ということがどういうことなのか
・どうやって眼を使うのか
ということを脳に教えておかなければならない期間になります。
ですので3歳児検診〜就学前検診などの視力検査で引っかかった子供ちゃんの場合、眼科にて適切な矯正を受ける必要があります。

殆どの子供ちゃんが適正度数の眼鏡装用できちんと見える様になりますが、片眼で見ているなどのケースの場合は、見える方の眼をアイパッチで覆う訓練なども必要になってくるので、まずはとにかく眼科を受診してください。

ちなみに上記の理由により。6歳以下の子供ちゃんの場合はものもらいや結膜炎になった時なども、特別に医師から指示がない限りは、自己判断で眼帯をしてはいけません。


眼鏡の選び方ってあるの?

上記で少し触れたとおり、確り見えている状態を保つ方が良い子供ちゃんの場合は、
デザインよりもまずフィッティング第一。
最近はフレームと鼻当てが一体化しているものが多いですが、このタイプのデザインは鼻の高さによって非常にフィッティングが左右されます。
眼鏡のフィッティングが悪いと、装用していてもすぐにズレて鬱陶しいだけでなく、適正な視力補正が行われません。

眼鏡というものはざっくり言うと、レンズによって眼に入ってくる光を屈折して、適正な位置でピントを合わせるための道具です。
で、そのピント合わせの前提には頂間距離というものが関わってきます。
横から見て眼球の一番高いところ(角膜頂点)とレンズまでの距離が12mmであること、を基準として度数というものは計算されているので、レンズが眼から遠かったり近かったりすると適正な矯正効果が得られなくなってしまいます。
カメラで1回ピント合わせてからレンズを近づけたり遠ざけたりしてシャッター押すとボケちゃう感じですね。

なので、子供ちゃんの場合は、
『鼻当てが調節可能なもの』かつ『顔の形にあったフレーム』
というのが望ましいです。
つるの部分も眼鏡店である程度は調節してもらえますが、セルフレームだと上手く曲げられずに折れてしまったりするので注意。
ただ、
ダサい眼鏡だとかけたがらなくて本末顛倒
だったりもするので、そこは子供ちゃんの気に入る可愛い(格好いい)眼鏡というポイントも重要だったりします。難しい……。

また、身長が伸びている間は近視の度数は進行していく可能性があります。
早い子は3ヶ月くらいで度数変わってしまったりするので、その度にレンズ度数の変更をしなければならないことも。
なのであまり高価なレンズではなく、近視進行のペースが分かるまではそこそこのレンズにしておくことをお勧めします。


大人の場合はもう好きに選んでください
値段で選ぶも良し、デザインで選ぶも良し。
フィッティング調節が重要であるという面から、子供ちゃんの場合はオシャレ眼鏡中心のお手頃眼鏡チェーン店はオススメしませんが、大人はその辺ファッションポリシーなんかも含めつつご随意に。
見え方というものは完全に個人の世界な訳で、くっきりはっきり見えてないと嫌だ!という方がいらっしゃれば、ちょっとぼんやり目で良いよ、と仰る方もいらっしゃり本当に様々なんですよね。

ただ、乱視の強い方は比較的高価なレンズを使用された方が満足度は高いと思います。
“安かろう悪かろう”ではないのですが、やっぱり安いレンズはそこそこの見え方です。
“高けりゃ良い”ってもんでもないですが、やっぱり高いレンズはそれなりの技術が集約されています。
軽い近視や老視の方ならそれほどレンズで不自由はないと思うのですが、度数が強ければ強いほど矯正は難しくなるので、信頼できる眼鏡店に相談されることをオススメします。

普段使いには100均の老眼鏡とかでもほんと充分だったりするんですけどね。


ブルーライトカットって本当に眼に良いの?

爆発的に流行りましたね、ブルーライトカット。
私も買いました。もう全然使ってませんが。
眼科的にはまだそこまでブルーライトがどうのこうのっていうのはないみたいなんですが、眩しさは眼精疲労の原因になったりもするので、装用していて楽であればどんどん装用して下さい、って感じでした。
PCとかスマホタブレットは眩しいですもんねー……。

因みによく夏場に「サングラス装用した方が良いですか?」と訊かれる方も多いのですが、これも装用した方が楽ならどんどんどうぞ、って感じです。
紫外線が白内障の原因に!!と心配しておられる方もいらっしゃったのですが、日常生活で浴びる紫外線程度であればそれほど神経質にならずとも大丈夫です。
※お仕事で溶接しておられる方とかは要注意。


眼鏡とコンタクト、どっちにした方が良い?

いわゆる黒目と呼ばれている角膜には、血管がありません。なので必要な酸素の供給は涙を介して行われます。
コンタクトレンズは角膜自体をすっぽりと覆ってしまうので、涙液の交換が上手く為されず、どれだけ酸素透過性が高いレンズでも裸眼よりは酸素不足に陥り、角膜への負担となります。

この角膜への負担という点だけ考えれば、圧倒的に眼鏡の方が眼には良いです。

が。
眼鏡の選び方の項目で述べた通り、眼鏡はレンズと角膜の間に距離があるため、度数の強い方だとどんどん矯正が難しくなります。
コンタクトレンズはその点角膜とレンズとの距離がゼロに近いため、歪みや誤差が生じにくいです。
また左右の眼で視力差がある場合は眼鏡での矯正が難しい(左右のレンズ度数に極端な差が出るため、レンズの厚みが左右で変わったり、長時間の装用で眼精疲労を伴う場合が多い)のですが、そういう場合にはコンタクトレンズが有効です。
部活やサークル、趣味などで日常的にスポーツされる方であれば眼鏡の装用が危険であることもあります。

コンタクトレンズも眼鏡も、どちらも一長一短あります。
ただし、コンタクトレンズは使用方法によっては失明につながる危険なものです。
実際「眼が痛いんです」とふらっと受診された方が、コンタクトレンズの不正使用であわや失明、ということが本当にありました。

上手く使えばコンタクトレンズほど便利なものはないと思いますが、とにかく、

・使用上の注意を必ず守る。
・絶対に連続装用しない。
・自覚症状が何もなくても眼科を定期受診する。

この3点を、自分の眼の為に守って使用して下さい。

今でこそドラッグストアや雑貨屋でコンタクトレンズが売っている状態ですが、コンタクトレンズ高度管理医療機器です。
なので眼科医の指示や製品の取り扱い説明を守ることが出来る、というのが使用の大前提になります。
適切な取り扱いが出来るのであれば、コンタクトレンズでも眼鏡でも、用途に合わせてどうぞ。


レーシックってどうなんですかね?

レーシック手術というのはひじょーにざっくり言うと、
角膜表面をレーザーで削って、角膜上で光の屈折を調節出来るようにする手術
だそうです。
(私がいたところはレーシック眼科ではなかったので、詳細までは把握していません……すみません)。

眼鏡もコンタクトレンズも必要なくなり、裸眼で生活出来るようになる。
強度近視の方にとっては、夢のような技術だろうなぁと思います。レーシック。

私の勤めていた眼科にもレーシック手術済みのスタッフがいましたし、気づいたらレーシック手術していた親戚もいます。
患者さんでもしている方はちらほらいらっしゃいましたが、私の知る限りでは重篤な不具合を訴えられる方はいらっしゃいませんでした。

但しまだ歴史の浅い手術です。医師の中でも意見が分かれている部分もあります。
実施に関しては信頼できる医師に相談の上、ご自身のメリットと想定し得るデメリットを充分に考慮した上で決定して下さい。


私が知る限りのデメリットとしては、角膜を削っている為どうしても乾燥感が強くなるらしく、スタッフは点眼が手放せないと言っていました。
また、手術後はとても良く見える状態になっても、経年で徐々に近視化することもあるそうです(追加手術可能な場合もあり)。

白内障手術もこの20年で飛躍的に技術が向上しており、眼科は他の科に比べてこういった進歩が早い方だそうなので、ご自身の年齢に応じて考えられても良いかなぁと。
個人的にはもう少し様子を見た方が良いんじゃないかなぁと思っています。

※もしレーシック手術を実施される場合は、将来的に白内障手術を実施する時の事を考えて、必ず手術前のご自身の眼のデータを保管しておいて下さい。
白内障手術の際、眼内に挿れるレンズの度数決定に元々の眼の形のデータが必要なので)

今後の展望

眼科界について、ではなくこの“まめちしき”について。

一番よく聞かれる“眼精疲労について”は次回書きたいと思います。
ほんとは今回書きたかったのですが、これ以上長くなるとちょっと読みにくそうなので。
点眼についても眼精疲労と一緒に書きます。
で、最後に簡単に有名な病気にでもまとめようかな。
メモメモ。