ひとさじの砂糖とうたかたの日々の泡

一匙の砂糖に似たささやかな幸せや、 取るに足らない日々の泡の記録。

月刊群雛(GunSu)2016年3月号の全作品感想

月刊、別冊共に2月号の感想を書くのが遅かったために立て続けに3月号になってしまいました。
毎度お馴染み、全作品感想の記事です。

過去2回へはこちらからどうぞ。

scfedxxxx.hatenablog.com

scfedxxxx.hatenablog.com

今回の3月号には初めて、私の作品も掲載して頂きました。ありがとうございます。

月刊群雛 (GunSu) 2016年 03月号 ? インディーズ作家と読者を繋げるマガジン ?

セルフパブリッシングのための校正術 / 大西寿男

<ゲストコラム連載・第1回>
個人的に非常にタイムリーな内容。
今回、群雛に掲載していただくにあたって、自分の文章に初めて校正というものをして頂いたのですが、本当に「何でこれに自分で気がついてなかったんだろう」と思うことが多過ぎて、もう恥ずかしいやら情けないやら……。
これでも自分できちんと読み返して、変換ミスや誤字脱字を直している後なのだから、本当に恐ろしい。
オリンピックペースながら、セルフパブリッシングもしているので、今回のコラムはとても実用的でありがたかったです。
勉強になりました。後2回も非常に期待してます。

念じた光の先 / 和良拓馬

<エッセイ>
手に汗握るスポーツ観戦を、今まさに自分でも体験しているかのような臨場感。
とても読みやすい文章で、最後までのめり込んで読んでしまいました。

スポーツ観戦は好きなのですが、バスケットボール以外はルールがあまり分からないんですよね、私……。
(ファールとか、『今何でその行動したの?』みたいなことが解らない)
ブラインドサッカーという競技も今回初めて知ったのですが、このエッセイではブラインドサッカーの特徴、見所や固有のルールなど、一番初めに疑問に思う部分を丁寧に解説して下さっています。
競技の魅力が深く伝わる内容で、非常に興味深く読ませていただきました。
パラリンピックへの興味が喚起されるエッセイ。タイトルも素晴らしい。
まずは今年の夏が楽しみです。

太陽のホットライン / かわせひろし

<連載小説>
普段あまり読まないジャンルのストーリーだったのですが、和良さんのエッセイからの流れで世界にすんなりと入り込むことができました。
読み終わってから、小説ではあまり読まないジャンルだけれど、漫画では結構読むなぁと思い至り、自分のハマり方に納得。
面白かったー!

プロサッカーチームのジュニアチームへの入団試験、という場面。
まず、登場人物が魅力的。太陽と光のペアも対照的でイメージしやすく、王道少年物語という雰囲気。行動や地の文からそれぞれの性格が伝わってきます。
太陽のお母さんも可愛い。いるいる、こういうお母さん。
入団試験、ということで時折ぴりっと雰囲気が引き締まりつつも、のびのびと動き回る少年たちの姿が瑞々しく、素直に応援したくなります。
何よりも読みやすい文章。
展開もすごく気になります。続きが早く読みたい!

俺は宇宙人 / 淡波亮作

<読切小説>
正統派SFといった佇まいの物語。
淡波さんの書かれる女性は皆仕草が艶っぽいなぁと思います。
一度最後まで読んで、今度は奥さんの視点で最初から読み直すと何とも言えない気分になりました。

ウラ垢女子 リンリン / よたか

<読切小説>
SNSの裏アカウントにちょっかいをかけられるところから、ストーリーが始まります。
描写が少なく、ほぼ会話だけで話が進んでいくので、さくさく読めるけれど、
個人的には物足りなさがありました。
ストーリーそのものも私の嗜好からは少し遠かったです。

SNSでの炎上と表現の自由 / 鷹野凌

<編集長コラム>
Twitterは特に気軽に、独り言感覚で発言してしまうから危ないのですが、オープンな場所で発言する以上、どんな些細な話題であれ、その発言の内容には最大限気をつけようと心掛けてはいます。
ただ、本当に世の中にはいろんな人がいるもので、例文であげられていたような『もうそんなことまで追求されたら何も発言できないよ!』ってレベルのリプライを飛ばしてこられたりすることも事実。
時にはそんな言葉を受け流しつつ、自分の発言や表現には常に真摯でありたいと思っています。

まんじゅうほしい / にぽっくめいきんぐ

<読切小説>
古典落語にこんなこと言うのは失礼千万と重々承知の上言いますけど、
まんじゅうこわい」って本当によく出来た話だなぁと思います。
私が初めて知ったのは、中学1年生の頃。
まんじゅうこわい」のパロディで知ったのですが、
最初一瞬ぽかんとしましたもんね。
人間の心理を手玉に取ったというか、人の裏をかくという行為がわかっていないと、理解出来ない話。

「まんじゅうほしい」は、これをAIに自然に語らせることが出来るか、という小説。

人工知能に興味はありつつも、全く守備範囲外なのでこうして楽しませていただく一方なのですが、いやー、面白かった。
何が面白いって、この物語に登場する博士たちが結構ロマンチストなんですよね。
まんじゅうの後にお茶が欲しくなることを「こうはく」に教えるために奮闘するシーンで、シー博士がコンビニエンスストアの販売データの統計(「「菓子」に属する品目と、お茶に属する品目とを、同時に購入するお客さんが有意に多い」)を持ってきたら「それだと何か違うと思わないか?」と言うんです。
ここがすごく好き。
データで回答するのではなくて、「こうはく」にちゃんと、
まんじゅうを美味しいと思ってもらって、
まんじゅうの後にお茶が欲しくなると体感的に思ってほしいと考えている。
「こうはく」も魅力的でしたが、この博士たちが実に魅力的でした。

にぽっくめいきんぐさん、著者情報を読んだところ、小説を書き始めたばかりとのことで本当にびっくりしました。
次の作品を心よりお待ちしております。

アニー / 竹島八百富

<読切小説>
悲しいくらいに小心者のビビリなもので、お化け屋敷やホラー映画を筆頭に、めちゃくちゃ怖いもの苦手なんですが、ホラー小説だけは視覚的なインパクトというアドバンテージがないため、怖いもの見たさで読んでしまう私。

面白かったー!!
ホラー小説って、ともすれば陳腐になりがちなんじゃないかなぁと思うんです。
多分それは実際のお化け屋敷とかと同じで、表現力や構成にすごく左右されるというか。
でもこの「アニー」は素直に怖くて面白かったです。

また「アニー」っていうあだ名が、絶妙。
新人研修のあの状況でこんなん言われたら、
そりゃあ雰囲気が一変するのもめちゃくちゃ解る。
いいなぁ、こういう話好きです。
何か遠慮なく意地悪な気持ちになれて、スカッとするし。
もっと読みたい。

ジョディ/スージー / 波野發作

<読切小説>
これはちょっと舞台背景や登場人物が解らなくて残念。
「オルガニゼイション」シリーズを読んでからもっかい読みます。

鳥籠の肖像 / 灰野蜜

<読切小説>
自分の書いたものに対して話すのがあまり得意ではないので、作品情報も著者情報もほとんど書いていないに等しいのですが、他の著者の方々が書かれたものを拝見して猛省しました……。
次回からはもうちょっと充実させます。

普段は自分で好きな時に書き、好きなタイミングで本にしているのですが、
折角の雑誌ということで掲載時期に合わせた物語を書いてみました。
友人に読んでもらったところ、『中原俊監督の1990年版「櫻の園」を思い出した』との感想が頂けて嬉しかったです。あの映画の雰囲気がもう堪らなく好き。
卒業や変化というものが苦手な方に読んで頂ければ幸いです。

表紙イラスト / 魅上満

<表紙イラスト>
中学高校と女子校だった私には全く縁のなかった第二ボタン。
あぁ、切ない。そして羨ましい。

実に個人的な感想なのですが、
私が書かせていただいた物語が卒業をテーマにしたものだったので、
それが終わってばーんと魅上さんの卒業式イラストなのがすごく嬉しかったです。
とても贅沢な気分が味わえました。ありがとうございます。

おわりに

私が書いたものの場違いな感じが否めないのですが、掲載して頂けたということでそこはあまり思い悩まずにいようと考えています。
著者の方々、編集部の皆様、今月号もありがとうございます。
私もこれから良いものを書いていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いたします。